国や地方自治体には給付金や助成金といった行政サービスがあります。それらは一定の条件を満たした人に対して現金等を支給するものであり、様々な種類があります。
今回はその中でも「老後・介護」といったテーマに絞り、制度の種類や内容、利用方法についても解説をしていきます。
「老後」における給付金・助成金の種類
高齢者世帯の内、半数以上は年金のみを収入源として生活をしています。そのため、高齢者世帯でも貧困と呼ばれる状態に陥ることも考えられます。
そこでそのような高齢者世帯が頼りにしているのが、お住まいの自治体などから給付される給付金や助成金です。代表的なものをご紹介します。
◯老齢年金生活者支援給付金
2019年10月に消費税率10%への引き上げに合わせて、所得が一定基準を下回る公的年金受給者に対して地方自治体から支給されているのが「老齢年金生活者支援給付金」です。
この給付金は以下の条件を全て満たす場合に、地方自治体に申請をして受給することが可能です。
・65歳以上の老齢基礎年金受給者であること
・「前年の公的年金等の収入金額」と「その他所得」との合計額が781,200円以下
・同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
上記の条件を満たし、地方自治体へ申請すると、年金に上乗せをされる形での給付となります。
◯高齢者住宅改修費用助成制度
老後の心配はお金のことだけではありません。老後を迎えると年々身体的な老化は避けることができません。自宅においても、今までは簡単に昇り降りができていた階段も手すりが無いと不安になったり、車椅子生活になることを想定して段差を無くすなどのバリアフリー対策を事前に行う人もいらっしゃるでしょう。
これらのようなケースにおけるリフォームは多額の費用がかかり経済的負担はかなり大きくなります。しかし当該助成制度を利用することで、費用負担の軽減を図ることができます。
この助成制度で助成される支給限度額は20万円です。工事費用の最大9割を限度額として助成を受けることができます。
仮に20万円の工事を行い、この助成制度を利用した場合は18万円が支給されて1割部分に当たる2万円は自己負担となります。
この助成制度は以下の条件を全て満たす場合に、地方自治体に申請をして受給することが可能です。
・要介護もしくはもう支援の認定を受けている
・助成金対象工事の施工であること
・介護保険被保険者証に記されている住所地にお住まいのこと
上記の条件を満たし、地方自治体へ申請すると、住宅改修費用が支給されます。この助成制度は一人につき最大20万円ですが、3段階以上介護認定が上がった場合は一度支給を受けていたとしても、再度の制度を同条件で利用できる「特例」もあります。
「介護」における給付金・助成金の種類
老後に出費が嵩むのは本人だけではありません。親を介護する子や孫などにもお金がたくさんかかってしまいます。
そこで頼りにしたいのが介護に関する国やお住まいの自治体などから給付される給付金や助成金です。代表的なものをご紹介します。
◯介護休業給付金制度
将来、自宅で介護をする為、仕事を休業せざるを得ない状況に陥る可能性があります。そうなれば、収入が無くなり生活が困窮すると懸念を抱く方もいらっしゃるかもしれません。しかしそのような場合には「介護休業給付金制度」を活用し、国から給付金を受け取ることが出来ます。
この制度では、家族の介護の為、休業をせざるを得なくなった際に、以下の条件を満たす場合に、国から給与の67%の給付金を受け取ることが可能です。
・雇用保険の被保険者であること
・介護の為に2週間以上休業をすること
・介護休業の取得が職場復帰の前提であること
・介護休業開始日前2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
・介護休業中に仕事をした日数が月に10日以下であること
・介護休業中の月々の賃金が休業前の賃金の80%未満であること
上記の条件を満たし、国へ申請すると、国から給与の67%の給付金を受け取れます。しかし、介護休業期間は、対象家族1人につき通算93日間となっている点には注意しましょう。
◯高額介護サービス費制度
介護保険の自己負担額は所得に応じて1〜3割と決まっています。自己負担額の上限を超えるような高額な介護費用がかかる場合には「高額介護サービス費制度」を活用しましょう。
この制度を使うと、上限額を超えた介護費用が戻ってきます。ただし、住宅改修費や福祉用具購入費はたとえ介護に要する為のものであったとしても、高額介護サービス費の対象外となる点は注意をしておきましょう。
制度をスムーズに利用する方法とは
今回紹介した老後・介護に関する制度を利用するには、介護認定の等級や住民税の申告状況を問われるケースが多くあります。したがって、これらの制度をスムーズに利用するには、お住まいの自治体にて以下の手続きを先に済ませておくと良いでしょう。
◯介護認定を取得しておく
老後・介護関連に関する制度を利用するには、介護認定を取得し、等級を確定させておく必要があるものが多いです。
介護認定は一度取得をしていても有効期限が切れるもの。制度を利用する前に自分自身の介護認定が有効期限内かどうかも確認をしておくと良いですね。
◯住民税の申告をしておく
老後・介護関連に関する制度を利用するには「住民税が非課税」などといった条件が付くことがあります。
その場合、例え収入が0であったとしても「収入が無かった」という申告をお住まいの自治体に出さないと、未申告状態となり「住民税が非課税」の対象にはならない点に注意しておきましょう。
まとめ
今後の日本では、人口ピラミッドからの傾向として更に超高齢化社会になっていくことが予想されています。そのため、老後や介護に関連する出費がどんどんと嵩む人も増えてくると思います。
今回紹介した制度はほんの一部に過ぎませんが、これらを知っているか否かで、出費の額に雲泥の差が生まれるでしょう。
これらの制度を有効に活用し、超高齢化社会における老後・介護における出費を乗り切っていきましょう。