節約・節税

【相続税】知らないと危険!相続までにやっておくべきことって?

「終活」は、人生の最期を見据えた活動のことです。終活のひとつとして相続に関する準備があげられます。「両親が高齢になり、相続に向けて動き始めたいけど何をしたらいいか分からない」「親が元気なうちに終活について学びたい」と思う人もいるのではないでしょうか。

本記事では、親の相続について知りたいというAさんの相談事例をもとに、相続税の節税方法や、相続に向けて準備すべきことについて解説していきます。なお、今回は一般的なアドバイスの一例をご紹介します。

Aさんの相続に関する相談事例

・相談者のプロフィール

都内近郊に住むAさん(55歳・男性)は、妻と2人暮らし。Aさんは一人っ子であり、兄弟姉妹はいません。また、Aさん父とは別居しており、Aさん父(80歳)は、都内の一戸建てに住んでいます。Aさん母は、15年前に他界。

・今後の想定

Aさん父が5年後に他界。Aさん父の財産はすべてAさんが相続する。

相談内容

父が高齢のため、万が一のときのための相続について考えるようになりました。父は都内に土地と建物を所有していることもあり、亡くなった際には相続税が発生するのではないかと予想しています。そこで、相続税を節税できる方法はなにかあるのでしょうか。

また、親の相続に向けて知っておくべきこと、親が元気な今のうちに準備すべきことがあれば教えてください。

相続財産の内訳

Aさん父の相続税の対象となる財産は以下のとおりです。

・預貯金 2,000万円

・有価証券 1,000万円

・土地(相続税評価額) 2,000万円

・居住用建物(相続税評価額) 2,000万円

基礎控除額と課税遺産総額は?

相続財産の総額から基礎控除額を引いたものが「課税遺産総額」となります。課税遺産総額と法定相続人に応じた金額が相続税として算出されます。なお、相続税の具体的な計算は、税理士に相談しましょう。

Aさん父が亡くなった場合の法定相続人はAさんのみです。以下の式にあてはめると、基礎控除額は3,600万円となります。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

Aさん父の相続財産は合計7,000万円です。7,000万円から基礎控除額の3,600万円を引いた3,400万円が課税遺産総額となります。

相続税の節税方法は?

Aさん父が亡くなった場合、算出した課税遺産総額から多額の相続税が発生することが予想されます。今回のケースにおいて、相続税の節税対策としてできることは以下の3つです。

・生命保険金の非課税枠を利用する

・生前贈与をする

・生前に墓地などを購入する

生命保険金の非課税枠を利用する

生命保険は、被保険者の死亡に対して一定の保険給付を行うものです。契約者、被保険者をAさん父、受取人をAさんとした生命保険を契約すると、保険金受け取り時に一定額まで非課税となる制度があります。

生命保険の非課税額は次の式で算出されます。

「500万円×法定相続人の数」

生命保険を契約することによって、預貯金を減らすことができます。さらに、生命保険の非課税枠を利用することで節税対策に繋がります。

生前贈与をする

生前贈与は、Aさん父が生きているうちにその財産を無償で与えることをいいます。生前贈与によってAさん父の相続時の財産が減るため、相続税の節税につながります。

贈与税の課税方法のひとつに「暦年課税方式」があります。暦年課税方式では、年間110万円以下の贈与に対しては贈与税はかかりません。これを利用して生前から少しずつ財産を贈与することによって、相続時の課税遺産総額を少なくすることができます。

ただし、相続開始前3年以内(令和6年からは7年以内※経過措置あり)の生前贈与は、110万円以内の贈与であっても相続税の課税対象となるため、注意が必要です。

生前に墓地などを購入する

墓地、お墓などの祭祀財産は相続税の対象とはなりません。Aさん父が生きているうちに、お墓を現金で一括購入することによって預貯金が減り、相続税の節税につながります。

なお、Aさん父が亡くなってからお墓を購入する場合は、相続税の節税対策とはなりません。また、生前にお墓をローンで購入し、ローンが残った状態で亡くなった場合も節税にはならないため、注意が必要です。

他にできることは?

Aさんの相談事例をもとに、相続税の節税方法について解説してきました。親が元気な今のうちに、節税対策以外に準備できることは何かあるのでしょうか。ここでは、以下の3つを紹介します。

・エンディングノートを作成する

・生前に相続税を大まかに計算してみる

・相続に関する手続きの流れを把握しておく

エンディングノートを作成する

エンディングノートとは、人生の最期に向けて自分の意思や希望、現在の状況などさまざまな事項を記録するノートのことをいいます。エンディングノートは、記録する事項や形式に制限はありません。

エンディングノートを作成する目的の一例として、以下があげられます。

・自分の人生を振り返るきっかけになる

・葬儀や埋葬の方法の希望を明確に伝えることができる

・デジタル情報(ID・パスワード)を記すことで、残された家族が財産などを管理しやすくなる

エンディングノートは書店などで購入できるほか、ワープロやノートなど自由な形式で作成することもできます。

生前に相続税を大まかに計算してみる

前述のとおり、Aさん父の課税遺産総額は3,600万円であることがわかりました。どのくらい相続税がかかるのか、計算してみましょう。

今回の事例において相続人はAさんのみであるため、3,600万円すべてをAさんが取得することになります。相続人が複数の場合は、各法定相続人の法定相続分に応じた取得金額を算出し、税率を掛け、控除額を差し引きます。

国税庁のHPより、3,000万円超〜5,000万円以下の相続税の税率は20%、控除額は50万円であることがわかります。この式に当てはめると、3,600万円×20%-50万円=670万円となり、Aさんが納付すべき相続税の総額は670万円となります。

実際に相続が発生した際の相続税の算出については、加算・控除など複雑な計算となるため、税理士に相談しましょう。

相続に関する手続きの流れを把握しておく

Aさんにできることは、相続に関する手続きの流れを把握しておくことです。流れを把握しておくことで、Aさん父に万が一のことがあったときでも落ち着いて相続の手続きをすることができます。

以下3点について確認しておくとよいでしょう。

・遺産の調査

Aさん父が所有する財産の種類や詳細を確認します。エンディングノートや遺言などで明らかにすることができます。

・不動産(土地・建物)の調査方法

日本では、土地と建物は別の不動産として扱われるため、それぞれ調査を行う必要があります。法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得することによって、その不動産の所有者、抵当権などの情報を知ることができます。登記事項証明書を取得することにより、不動産の価格を調査することができます。

・相続に必要な書類の把握

不動産の名義変更や預貯金口座の払い戻しなど、さまざまな手続きに戸籍謄本が必要となります。Aさん父が生まれてから亡くなるまでの戸籍全部事項証明書を漏れなく集めなければなりません。漏れがあると、手続きができないため注意が必要です。

戸籍謄本には有効期限がありません。そのため、生前に準備しておくことも可能です。

まとめ

本記事では、Aさんの相談事例をもとに、相続税の節税方法や、相続に向けて準備すべきことについて解説しました。

Aさんの事例における相続税の節税方法として、「生命保険金の非課税枠を利用する」「生前贈与をする」「生前に墓地などを購入する」を紹介しました。ケースによって節税方法は異なるため、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

また、相続税の節税対策以外にも、相続に向けた準備として「エンディングノートの作成」などを紹介しました。人生の最期まで後悔なく過ごしてもらうためにも、家族のサポートは必須といえるでしょう。


No.4152 相続税の計算|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

No.1750 死亡保険金を受け取ったとき|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

No.4155 相続税の税率|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

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