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【年収の壁】年収130万を超えたらどうなるの?年収の「5つの壁」と扶養内で働く際の注意点とは?

夫婦どちらかの扶養に入りながらパート・アルバイトで働くケースでは、年収によって税金や保険料の負担額が異なります。「103万、106万、130万ってよく聞くけど、一体どんな違いがあるの?」「130万を超えても扶養内で働けるって聞いたけど、本当なの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

本記事では、制度改正された「年収の壁」の概要をはじめ、5つの壁と扶養内で働く際の注意点についても解説していきます。

「年収の壁」とは?

扶養内のパート・アルバイト労働者は、一定の年収を超えると税金や保険料の負担が発生します。このことを「年収の壁」といいます。

税金や保険料の負担によって実際の手取りが減少するため、働く時間を調整して一定の年収を超えないようにするケースが発生しています。この「働き控え」を少しでも解消するため、政府は「年収の壁」への新たな対応策を発表しました。

「年収の壁」の対象者は?

「年収の壁」の対象は、夫婦どちらかの扶養に入りながらパート・アルバイトで働く国民年金の第3号被保険者です。

そのため、夫婦ともに正社員である共働き世帯や第1号被保険者である自営業者などは対象ではありません。

税金・保険料負担の壁

「年収の壁」には、一定の年収を超えると税金がかかる「税金負担の壁」と、一定の年収を超えると社会保険へ加入する「保険料負担の壁」の大きく2つに分けられます。

①税金負担の壁

扶養内で働くパート・アルバイト労働者であっても、一定の年収を超えると住民税、所得税の納付義務が発生します。年収100万円を超えると住民税がかかり、年収103万円を超えると、超えた分に対して所得税がかかります。

②保険料負担の壁

年収106万円を超えると、要件を満たすことでパート・アルバイト先の社会保険に加入しなければなりません。また、社会保険の加入条件とならない勤務先で働いている等の場合において年収130万円を超えると、国民年金の第1号被保険者となり、国民年金・国民健康保険への加入義務が発生します。

「年収の壁・支援強化パッケージ」の概要

2023年9月27日、厚生労働省より「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表されました。概要は以下のとおりです。

①「106万円の壁」対応

年収106万円を超えると、厚生年金・健康保険の加入義務が発生します。保険料の負担を避けるために働く時間を減らすことを防ぐために、賃上げや手当の支給などの取り組みを実施する企業に対して労働者1人当たり最大50万円の支援を受けられます。

②「130万円の壁」対応

一時的に年収130万円以上となっても、事業主の証明を添付することによって引き続き被扶養者認定を受けられます。あくまで一時的な措置であるため、原則として連続2年までの上限が設けられています。

そのほか、企業の配偶者手当の見直し促進なども盛り込まれています。

パート・アルバイトで働く際に知っておきたい「5つの壁」

前述のとおり、「年収の壁」には「税金負担の壁」と「保険料負担の壁」の2種類に大別されます。ここでは、さらに詳しく以下の「5つの壁」に分けてみていきましょう。

・年収100万円の壁

・年収103万円の壁

・年収106万円の壁

・年収130万円の壁

・年収201万円の壁

年収100万円の壁:住民税の納付義務が発生

扶養内のパート・アルバイト労働者においては、年収100万円を超えると住民税の納付義務が発生します。

住民税の額は前年度の収入やお住まいの地域によって異なります。ここでは、年収120万円のケースを一例として実際に住民税がいくらかかるのか算出してみましょう。

【年収103万円のケース】(一例)

課税総所得金額:120万円-55万円(給与所得控除)-43万円(基礎控除)=22万円

住民税(均等割):1,500円(都民税)+3,500円(市区町村税)=5,000円

住民税(所得割):22万円×10%=22,000円

住民税合計:5,000円(均等割)+22,000円(所得割)=27,000円

上記は一例であり、実際には個人の状況によって住民税の額は異なります。扶養内のパート・アルバイト労働者が住民税を非課税にするためには、年収100万円を超えないことが必要です。

年収103万円の壁:所得税の納付義務が発生

年収103万円を超えると、所得税の納付義務が発生します。なお、年収100万円超え103万円以下の場合は住民税のみ、103万円を超えた場合は住民税および所得税がかかります。

所得税の税率は収入によって異なります。ここでは、年収120万円のケースを一例として実際に所得税がいくらかかるのか算出してみましょう。

【年収120万円のケース】(一例)

課税総所得金額:120万円-55万円(給与所得控除)-48万円(基礎控除)=17万円

所得税:17万円×5%=8,500円

扶養内のパート・アルバイト労働者の年収が120万円の場合、所得税は8,500円です。住民税と合わせても年35,500円の負担となります。

そのため、住民税・所得税の支払いが発生しても、税金面だけを考慮すると必ずしも「働き損」になるわけではありません。年収103万円を超えても働いた分の手取りは十分増えるといえるでしょう。

また、扶養内のパート・アルバイト労働者の年収が103万円を超えると、納税者本人の配偶者控除がうけられなくなります。配偶者特別控除の対象となり、所得控除の額が減少するため注意が必要です。

年収106万円の壁:要件を満たす場合において社会保険料の納付義務が発生

従業員数が101人以上の企業で働いている扶養内のパート・アルバイト労働者の年収が106万円を超える場合、以下の要件をすべて満たすことによって社会保険への加入が義務となっています。

・労働時間が週20時間以上である

・月額賃金が88,000円以上である(年収106万円以上である)

・雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある

・学生ではない

社会保険料は収入や市区町村、年齢等によって異なります。年収120万円のケースでは、厚生年金保険料、健康保険料として毎月約14,000円が給与から天引きされます。(東京都・40歳未満の場合)

年収130万円の壁:国民年金の第1号被保険者となる

パート・アルバイト労働者の年収が130万円を超え、かつ社会保険の加入条件とならない勤務先で働いている等の場合は、扶養から外れ国民年金・国民健康保険に加入しなければなりません。

年収150万円の場合、国民年金と国民健康保険の合計は年間約36万円となります。加えて住民税・所得税の負担もあるため、手取りはさらに減少します。

年収201万円の壁:配偶者特別控除がうけられなくなる

配偶者の年収が201万円を超えると、配偶者特別控除がうけられなくなります。

配偶者特別控除とは、配偶者の年収が103万円を超えて配偶者控除がうけられないときでも、一定の額の所得控除がうけられるというものです。

配偶者特別控除がうけられなくなることで、納税者本人のおさめる税金が増加します。

扶養内で働く際の注意点は?

扶養内でパート・アルバイトをする際、「年収の壁」のほかに注意すべきポイントとして以下の2つを紹介します。

・社会保険への加入要件は「見込み年収」で考える

・将来もらえる年金の額が不足するケースも

社会保険への加入要件は「見込み年収」で考える

社会保険の加入要件となる「年収106万円の壁」「年収130万円の壁」は、実際の年収ではなく「見込み年収」で考えます。

例えば、年の途中である4月からパートを始め月収が9万円であった場合、年収が106万円に届いていなくとも通年で月収9万円であるとみなされ、社会保険への加入が必須となります。

将来もらえる年金の額が不足するケースも

年収106万円を超えて社会保険に加入すると、毎月の手取りは減ってしまいます。

社会保険に加入することで国民年金+厚生年金の2階建てとなり、将来もらえる年金が増加します。また、老後の年金だけでなく、病気やケガで働けなくなった場合に傷病手当金がもらえるなどのメリットもあります。

106万円を超えて働くかについては、目先の手取り減少というデメリットだけを見るのではなく、ワークライフバランスや将来もらえる年金の額などを考慮したうえで判断することが大切です。

まとめ

本記事では、制度改正された「年収の壁」の概要をはじめ、5つの壁と扶養内で働く際の注意点について解説しました。

「年収の壁」は大きく「税金負担の壁」と「保険料負担の壁」に分けられます。100万円・103万円・106万円・130万円・201万円でそれぞれ住民税、所得税の負担や社会保険への加入義務など細かく設定されています。

それぞれのメリット・デメリットを考慮したうえで、個人の状況に合った選択をするのが好ましいといえるでしょう。


いわゆる「年収の壁」への対応|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

No.1199 基礎控除|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm

No.2260 所得税の税率|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

社会保険の適用が段階的に拡大! 従業員数101人以上の企業は要チェック | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202209/2.html

厚生年金・健康保険の保険料額の自動計算ツール

http://www.n-jim.jp/information/tool.html#result

No.1195 配偶者特別控除|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm

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マル得ウェブ編集部

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