誰しも、生活に困窮することなく平穏な毎日を過ごしたいと思っています。しかしながら、突如として生活が困窮し、お金に困る生活に突入する可能性を誰しもが持っています。2020年には未曾有のパンデミックとも言われる新型コロナウイルスが猛威を振るい、忽ち生活に困窮する人が後を絶たない状況となりました。
そして、そのような際にも日本国憲法第25条により、国民全員が「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることができる権利を持っているのも事実です。
この権利を尊重するためにも、生活が困窮した場合に、国や地方自治体から受けることができる制度がいくつかあります。
今回はこれらの制度を順番に解説していきます。今後の万が一の際の知識の備えとして是非参考にして下さい。
①生活困窮者自立支援制度
生活困窮者自立支援制度とは、経済的に困窮し、最低限度の生活水準を維持することができなくなる恐れのある人へ包括的な支援を行う制度です。
近年では、経済的な困窮問題も多様化しており、就労問題、心身の健康問題、住まいの確保、家庭内問題、債務問題、社会的な孤立など、自らの「お金」に直結する問題も多く実在します。
そのような背景により、この制度では包括的に就労やその他の自立に関する相談支援や、自立に向けた支援計画の作成支援などを行います。具体的には以下のような支援があります。
・住居確保給付金の支給
2年以内に急なリストラなどを受けた人や、休業により収入が減少して離職や廃業と同程度の状況にある人で、住居を失った場合や失うおそれがある場合に、再就職に向けた活動を行うことを条件として、一定期間家賃相当額の給付金を受け取ることが出来ます。
・就労準備支援事業
一般就労に必要な訓練や研修等を、日常生活自立、社会生活自立段階から受けることが出来ます。
・一時生活支援事業
住居がない人が、有期で宿泊場所や衣食の提供を受けることが出来ます。
・家計改善支援事業
現在の家計状況を把握し、家計改善に向けたアドバイス等を受けることが出来ます。
・子どもの学習・生活支援授業
生活困窮世帯の子どもに向けての、学習支援や生活習慣や育成環境の改善に関する助言等を受けることが出来ます。
②年金保険料減免
年金保険料減免とは、不意な収入の減少やリストラにより、国民年金保険料を支払うことが困難になった場合の救済措置です。
仮に、急にリストラに見舞われたとしたとしても、まずは日常生活を経済的に成立させることが先決で国民年金保険料を支払う余力が無いケースがほとんどです。しかしながら、国民年金第1号保険者は保険料を納める義務があります。そこで有効となるのが、国民年金保険料減免の制度です。保険料の減免額は、個人毎の状況によって全額、4分の3、半額、4分の1の4種類に分類されています。
年金保険料減免を申請するメリットは2点あります。
1点目は、保険料を免除された期間は、老齢年金を受け取る際に2分の1を受け取ることが可能です。
2点目は、保険料の免除期間に怪我や病気等で障害や死亡という事態が発生した場合でも、障害年金や遺族年金受け取りの対象になります。ちなみに障害年金、遺族年金には所得税や住民税は課税されません。
年金保険料減免を申請できる要因は、他にも低所得世帯や未就学児への軽減措置もあります。申請できる条件は各自治体毎に異なっているため、お住まいの行政機関へ一度確認に行ってみてもよいかもしれませんね。
③税金納付猶予
税金納付猶予とは、上記と同様に不意な収入の減少やリストラにより納期限までに税金を納付することが困難となった場合の救済措置です。
給与所得者の場合は、国に対して所得税、お住まいの自治体に対して住民税を納付しなければなりません。給与の支給を受けている間は、基本的は税金は給与天引きとなるので、あまり支払いを困難と感じることは少なかったですが、仮にリストラをされて給与天引きが出来なくなった場合は、自ら金融機関等に出向いて税金を納付しなければならなくなります。リストラを受けたことにより、生活水準を落とさざるを得なくなった状態で、目の前に税金の支払い納期が迫っていることの大変さは想像に難くないはずです。そこで有効となるのが、税金納付猶予の申請です。
急なリストラ等で納期内に税金の納付が困難な場合は税務署(住民税は市役所)の承認を受けて税金を納期限後に分割して納付することができます。猶予を受けるためには、一定の条件を満たす必要があり、国や市役所の審査があります。また、納期限内に税金を納めている人に対して公平を期すために、納期限を超過した税金に対しては、税金納付猶予が承認となっていても延滞税が発生することには注意しておきましょう。
④光熱費支払い延期
光熱費支払い延期とは、ある事情により電気・ガス料金の支払いが困難になった場合、公共料金の支払い期日を繰延できる特定措置です。近年では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、各事業者が国の指針の下で特例措置に応じました。
対象者は、新型コロナウイルスの影響を受けた個人や法人と明記されていることからも、平常時に受けれる制度ではないものの、仮に新型コロナウイルス並のパンデミックが発生した場合には同様の特例措置が講じられる可能性もあるので、光熱費の支払い延期があるという知識はしっかりと持っておきたいですね。
⑤まとめ
今回は不意の収入減少やリストラ、または新型コロナウイルス感染拡大等のパンデミック発生時における「困った時のお金」に関して国や地方自治体から受けることができる生活困窮者自立支援制度や各種減免措置について解説をしました。
誰しも、日々平穏でお金に困らない生活を送りたいと思っています。しかしながら、2020年に新型コロナウイルスが世界的に流行すると誰が予想できたでしょうか。新型コロナウイルスを要因としたリストラや収入減少に見舞われて生活に困窮する人が後を絶ちませんでした。そしてそこで必ず向き合う必要があるのが「お金の問題」です。今回解説をした制度を知っているかどうかで、万が一自分がリストラ等の当事者になったケースで、次の行動が変わってくるはずです。「備えあれば憂いなし」です。万が一の事態に見舞われた場合は、これらの減免制度等を活用し、次の光が見えるまでの間を粘り強く乗り越えていきましょう。