退職を考えるとき、お金に不安を感じる方も多いでしょう。この記事では、退職するともらえるさまざまなお金について解説します。
退職すると雇用保険から給付金がもらえます。6月30日に厚生労働省が発表した「雇用保険事業月報」によると、2023年5月の基本手当初回受給者数は約13万7千人でした。前年同月比で12.4%増加しており、直近4年間の平均と比べても多いです。
給付金は退職後の生活を経済的にサポートします。申請しないともらえない給付金もあるため、知らないと損をするかもしれません。
安定した生活を送りながら求職活動するために、退職するともらえるお得な制度を活用しましょう。
退職後にもらえる給付金とは
受給条件を満たす方が退職すると、雇用保険の失業等給付がもらえます。
失業等給付は、退職した方の生活と雇用の安定を目的としており、4つの種類があります。
求職者給付 | 最も代表的な給付で、失業状態になった方々を支援するための給付 |
就職促進給付 | 失業者が新たな仕事につくのを助け、就職過程の促進を目指した給付 |
教育訓練給付 | 新たなスキルや知識を学び、市場価値を高めるための取組みを支援する給付 |
雇用継続給付 | 働く方の職業生活を円滑に継続させることを目的とする給付 |
4つの給付金の中に、それぞれ目的に応じた手当や給付金があり、分類すると次のとおりです。
引用:厚生労働省 雇用保険事務手続きの手引きP.151 第13章失業等給付について
就職先を探している場合にもらえるお金:基本手当
退職後に次の就職先を探している間は基本手当がもらえます。基本手当とは、退職前の賃金をもとに算出された基本手当日額を一定期間もらえる給付金です。
一般的に「失業保険」や「失業手当」とも呼ばれ、退職後にもらえるお金として多くの方が思い浮かべる給付が基本手当でしょう。
支給条件を満たせば、正社員のみでなくパートやアルバイトでも基本手当の受給は可能です。
基本手当日額は退職前6か月間の給料を基に計算します。基本手当の給付日数は、勤務年数や退職理由に応じて異なります。自己都合退職の場合の給付日数は次の表のとおりです。
雇用保険の被保険者であった期間 | |||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
たとえば、退職6か月前の給料合計が60万円で勤続10年未満の場合、基本手当日額は2,666円となります。給付日数は90日のため、支給合計額は239,940円です。
次の会社を探している間、仕事をしていなくても20万円以上もらえれば、お金への不安が和らぐでしょう。新たな道へ進むために退職を考えている方は、基本手当を有効活用してください。
参照:
厚生労働省 ハローワークインターネットサービス 基本手当について
厚生労働省 ハローワークインターネットサービス 基本手当の所定給付日数
面接で遠方へいく場合にもらえるお金:広域求職活動費
面接を受けるために遠方へ行く場合は、広域求職活動費がもらえます。
広域求職活動費とは、ハローワークの紹介で遠方の会社を訪問して面接などを受ける際の、交通費や宿泊費を支給する制度です。
広域求職活動費を受け取るためには、雇用保険の受給手続きをしているハローワークと訪問する会社を管轄するハローワークの距離が200km以上でなければなりません。距離が200km以上あると交通費が支給され、距離が400km以上あると宿泊費も支給されます。
たとえば、ハローワーク渋谷で受給手続きをしている方が、面接で沖縄に行く場合はハローワーク渋谷からハローワーク沖縄までの飛行機代を含めた交通費と宿泊費が支給対象です。
交通費は通常の経路(電車、飛行機など)の往復費用が支払われ、53,000円とします。宿泊費は沖縄で1社訪問する場合、1泊7,800円となり、支給額合計は約6万円です。
広域求職活動費の制度を活用すれば、遠方へ面接に行く費用を心配する必要がないため、再就職先の選択肢が広がるでしょう。
参照:
厚生労働省 ハローワークインターネットサービス 就職促進給付
厚生労働省 「広域求職活動費」と「移転費」のご案内
厚生労働省 業務取扱要領 雇用保険給付関係(就職促進給付)P.65
就職が決まった場合にもらえるお金:再就職手当
基本手当の受給が決定した後、早期に就職が決まると再就職手当がもらえます。再就職手当の主な支給条件は次のとおりです。
- 基本手当の給付日数が3分の1以上残っていること
- 1年を超えての勤務が確実なこと
再就職手当は、受給予定の基本手当の一部を、新たな就職が決まったときに受け取れる制度です。給付される額は、基本手当の残日数と日額に応じて決まります。再就職が早ければ早いほど、より大きな金額が支給されます。
たとえば、基本手当日額が2,666円で給付日数が90日の方が、給付日数を50日残して就職先が決まった場合、支給される再就職手当は約8万円です。支給合計額は約20万円のため、就職が決まっても基本手当の約40%を受け取れます。
基本手当を受給中に就職が決まると、基本手当の一部が受け取れるうえに就職先から給与も支払われ、お得です。また、早く再就職すると支給額が多くなるため、早めの求職活動を心がけましょう。
参照:
厚生労働省 ハローワークインターネットサービス 就職促進給付
厚生労働省 再就職手当のご案内
病気やけがで働けない場合にもらえるお金:傷病手当
基本手当の受給が決定した後に病気やけがのため、15日以上働けない場合は基本手当の代わりに傷病手当がもらえます。
傷病手当の支給額は基本手当と同額で、支給を受けられるのは基本手当と傷病手当のどちらかです。
引き続き30日以上働けない場合には、傷病手当をもらうか、基本手当の受給期間を延長するかのどちらかを選択できます。
病気やけがが完治してから基本手当の支給を受けて求職活動したい場合は、基本手当の受給期間を最大4年間延長可能です。
たとえば基本手当日額が5,000円、給付日数90日の方が病気で寝込んでしまい、30日間求職活動ができない場合は15万円の傷病手当を受け取れます。
病気で働けない状態でも、基本手当と同額の補償を受けられるため安心して療養できます。もし、病気やけがで働けなくなった場合は、完治したあと速やかにハローワークに申請しましょう。
参照:厚生労働省 ハローワークインターネットサービス 基本手当について
TOEICの勉強をしている場合にもらえるお金:一般教育訓練給付金
スキルアップのために講座を受講すると、教育訓練給付金がもらえます。
教育訓練給付金は支給要件を満たす方が、厚生労働省の指定を受けた講座を受講した場合、受講費の一部を支給する制度です。
TOEIC受験を目的とする講座を受講した場合は、一般教育訓練給付金として10万円を限度に受講費の20%が支給されます。
たとえば、入会金やテキスト代込みで50万円のTOEIC受験コースを受講した場合は、10万円が給付金として受け取れます。
ただし、対象となる講座は厚生労働省の指定を受けた講座のみです。TOEICを受験する講座すべてで支給が受けられるわけではないため注意しましょう。
参照:
厚生労働省 特定一般教育訓練給付制度のご案内
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します
お得な制度を活用しましょう
新たなキャリアを追求する過程で、一時的に雇用が途絶えたときに雇用保険の各種給付金が役立ちます。
雇用保険の基本手当や広域求職活動費、再就職手当、傷病手当、一般教育訓練給付金などは、退職後のさまざまな場面で経済的にサポートします。
雇用保険の給付制度を知っていれば、退職後の生活が計画しやすくなり、よりスムーズに次のステップに進めるでしょう。
出典:厚生労働省「雇用保険事業月報」主要指標(2)[一般]