専業主婦は国民年金の第3号被保険者となり、扶養を受ける妻は自身が保険料を負担しなくても老後に年金を受け取れます。ただし、会社員だった期間が結婚までの20代後半と短い専業主婦は、厚生年金の金額が少なく老後生活に不安を抱いているかもしれません。離婚すれば年金分割もあり得ますが、効果はあくまで限定的です。それでは将来、結婚を機に専業主婦になろうとしている22歳の新社会人がたとえ離婚することになっても、生活が破綻しないための資産形成はどのようにしておけば良いのでしょうか。国民年金の第3号保険者と年金分割について説明した後、iDeCoやNISAによる投資についても解説します。
国民年金の第3号被保険者
厚生年金や共済年金に加入している夫に扶養されている専業主婦は、国民年金の第3号被保険者となるので本人が国民年金保険料を納付する義務はありません。将来は老齢基礎年金を受給できますが、65歳から受給できる年金額は満額で79万5千円です。
また、厚生年金に加入していた期間があれば合わせて老齢厚生年金も受給できますが、加入期間が短ければそれほどの上乗せは期待できないでしょう。
さらに、第3号被保険者は第1号被保険者(自営業等)のように、国民年金基金に加入したり付加年金を納付したりして、年金額を増やすことはできないので注意が必要です。
年金分割
年金分割は、専業主婦が将来離婚したときに、夫の年金を分割して受け取れる制度です。離婚時の年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」があり、いずれも原則として離婚等をした日の翌日から2年以内に請求が必要となります。
合意分割
平成19年4月以後に離婚等をした場合は、当事者間の合意や裁判での手続きにより、婚姻期間中の標準報酬月額と標準賞与額を分割できます。按分割合は1/2が上限となっています。
3号分割
平成20年4月1日以後の婚姻期間中に第3号被保険者期間があった場合に、相手方の厚生年金の標準報酬月額と標準賞与額を1/2ずつ当事者間で分割できる制度です。なお、3号分割制度では当事者の合意は必要ありません。
専業主婦の資産形成はiDeCoやNISAで
老齢基礎年金を受給し、年金分割したとしても、老後を過ごすため生活資金の不安は残ります。老後の資産形成を図るにはiDeCoとNISAが有効です。投資によるリスクはゼロではありませんが、対象となる金融商品は安全性の高い金融商品が選ばれています。
iDeCoは、自分で選んだ金融商品を自分の掛け金で運用する私的年金です。月額は2万3千円まで、年額に換算すると27万6千円まで掛けられます。
2024年から始まる新NISAは、生涯1,800万円まで生涯の非課税枠が広がり、つみたて投資枠や成長投資枠に投資できる制度です。
通常、株式投資や投資信託で得られた売却益や運用益には、20.315%課税されます。
それぞれの税制上の優遇措置を整理すると、次のとおりになります。
拠出時・投資時 | 運用時 | 受取時 | |
iDeCo | 全額所得控除 | 運用益が非課税 | ・年金受取(公的年金控除)・一時金受取(退職所得控除) |
新NISA | なし | 売却益・運用益が非課税 | なし |
iDeCoの拠出金は全額所得控除となりますが、専業主婦になると自分の納める税額がなくなるか少なくなるので、節税効果が低下する場合があります。
20代なら貯蓄+新NISAで生活防衛を
20代で資産形成するには、まず生活を安定させて投資に使える資金を捻出することが大切です。生活のための資金はしっかり確保しておいて、余剰資金があれば新NISAで投資するのがよいでしょう。
新NISAは決まった月額掛金がなく(つみたて投資枠を除く)、自分のできる範囲で投資できます。また、お金が必要になれば取り崩しもできるので手軽にはじめられます。
さらに投資と並行して、将来のために資格を取得したり投資に関する知識を得たりすることも進めておきましょう。
30代なら新NISA+iDeCoで積極的に
30代になれば、生活も安定し投資に使える資金も増えてきているでしょう。20代と同様に新NISAを継続し、さらに余裕があればiDeCoにもチャレンジしてはいかがでしょうか。また、投資だけではなく貯蓄も継続し、結婚資金や自宅の取得資金の一部も準備できると安心です。投資に回すお金は毎月定額で決めておくのもよいでしょう。
まとめ
本記事では、専業主婦の資産形成について解説しました。専業主婦は老齢基礎年金や離婚時の年金分割がありますが、生活に不安を感じる方もいるでしょう。まずは生活を安定させ、余剰資金でiDeCoや新NISAに投資するのがおすすめです。投資にリスクは付きものですが、iDeCoや新NISAで扱う金融商品は比較的安全性が高くなっています。投資をするのであれば時期が早いほうが複利の効果があります。本記事を参考に無理の無い資産形成をはじめて見てはいかがでしょうか。