自転車事故による高額賠償事例が報道されたことをきっかけに、個人賠償責任保険への関心が高まっています。
2021年6月1日に損害保険ジャパン株式会社が発表した「身のまわりリスクに関するアンケート」結果によると、個人賠償責任保険に加入している人は61.6%でした。
約60%以上の人が他人に対する補償に備えています。
この記事では、個人賠償責任保険でどれだけカバーされるのかについて解説します。
個人賠償責任保険は保険料が安いうえに、自転車事故以外にも日常生活で起こるさまざまなトラブルを補償するお得な保険です。
個人賠償責任保険の充実した補償内容を把握していれば、トラブルに遭遇した際、保険でスムーズに解決できるでしょう。
個人賠償責任保険とは
個人賠償責任保険とは、契約者またはその家族が日常生活の中で他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したりした際の損害賠償責任に備える保険です。
契約者のみでなく、生計を共にする同居の親族も補償対象となります。
たとえば、親が個人賠償責任保険に加入すると、親の契約一つで家族全員が補償されます。
また、別居していても未婚の子であれば補償対象です。
親から仕送りを受けて一人暮らししている学生の子どもも、親の契約で補償されます。
家族それぞれが保険に入る必要がないため、保険料が節約できます。
個人賠償責任保険は自動車保険や火災保険の特約として加入している場合が多く、保険料は月額150円程度です。
保険料が安く、1つの契約で家族全員を補償する個人賠償責任保険はコスパの高い優れた保険です。
こんな場合も補償される?個人賠償責任保険の補償例
個人賠償責任保険は他人の身体やモノに損害を与えた場合に補償されます。
具体的にどのようなケースが補償されるのかみてみましょう。
家族が自転車で人をはねた
契約者の家族が自転車で人をはねた場合、個人賠償責任保険で相手への被害を補償できます。
事故を起こした本人が保険に加入していなくても、家族のうち一人が個人賠償責任保険に加入していれば家族みんなが補償されるからです。
近年、自転車による事故で高額な賠償金を請求される例が相次ぎ、自転車保険に加入する人が増えています。
令和4年5月に東京都が発表した令和3年度「自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等に関する加入状況調査」結果によると、自転車を利用する都民の62.8%が対人賠償事故に備える保険等に加入していました。
自転車保険は相手を補償する個人賠償責任保険と自身のケガを補償する傷害保険で構成されています。
家族のうち一人が個人賠償責任保険に加入していれば、家族それぞれが自転車保険に加入する必要がないため、その分の保険料を浮かせられてお得です。
子どもがケガをさせた
契約者の子どもが友達にケガをさせてしまった場合も、個人賠償責任保険で補償されます。
個人賠償責任保険は故意による損害を補償対象外としていますが、子どものトラブルの多くは故意によるものではないからです。
たとえば、遊んでいるときに誤って友達にぶつかりケガを負わせてしまったり、おもちゃの取り合いで友達を噛んでしまったりしたときも保険で対応できます。
しかし、けんかで相手にケガをさせた場合は補償対象外となるため注意しましょう。
ベランダからの落下物
ベランダからの落下物で他人をケガさせたり、他人の物を壊したりした場合、個人賠償責任保険が使えます。
たとえば、ベランダからプランターが落ちて駐車中の車に傷をつけた場合、プランターの所有者に対して車の修理費用が請求されます。
日々の暮らしの中で損害賠償責任を請求されたときに役立つのが個人賠償責任保険です。
店のものを壊した
お店のものを誤って壊した場合の弁償費用も個人賠償責任保険から支払い可能です。
たとえば、インテリアショップで誤って食器を落とした場合、お店から請求された費用は保険金で対応できます。
しかし、泥酔してお店のものを壊した場合は補償対象外となる可能性が高いため、お酒の場では十分な注意が必要です。
犬が人にかみついた
飼い犬が他人にかみついた場合も個人賠償責任保険で対応できます。
飼い主には法律でペットの監督義務や注意義務が求められているため、ペットが他人に危害を加えた場合は飼い主が賠償責任を負い、治療費や慰謝料などを支払います。
ペットを飼っている方は個人賠償責任保険に加入しておくと、万が一のときの備えになり安心です。
マンションの水漏れ
自身の部屋からの水漏れにより、他人の部屋に損害を与えた場合は個人賠償責任保険が使えます。
洗濯機の排水ホースや蛇口から水が漏れた場合など、自身の不注意により他人の部屋の天井や家具などに与えた損害に対して保険金が支払われます。
他人に与えた損害は補償の対象となりますが、水濡れを起こした本人の部屋の被害は個人賠償では補償されません。
水濡れを起こした部屋の被害は、火災保険の特約で対応できる場合もあるため、加入している火災保険の補償内容を確認してみてください。
進化する個人賠償責任保険
近年、社会情勢や時代のニーズに基づき、保険会社は個人賠償責任保険の補償内容を改定しています。
改定内容は主に次の2点です。
- 電車遅延を発生させた際の賠償責任を追加
- 借りた物の損壊や盗難被害の賠償責任を追加
1つ目の改定では、誤って線路に立ち入ったことにより電車を止めたり遅らせたりした場合の賠償責任を補償範囲に追加しました。
たとえば、認知症の高齢者が線路に立ち入るケースや、不注意でホームから転落するケースなどが想定されます。
2つ目の改定では、他人から借りた物の損壊や盗難による賠償責任を補償範囲に追加しました。
ゴルフ場で借りたゴルフカートや、子どもが友達から借りたゲーム機などに対する賠償責任も補償されるようになりました。
改定内容は保険会社の商品により異なります。
すべての保険商品で補償されるようになったわけではないため、注意してください。
個人賠償責任保険の加入方法
個人賠償責任保険に加入する方法は主に2つです。
- 損害保険の特約で加入
- クレジットカードに付帯する
個人賠償責任保険に加入している方の多くは、損害保険の特約としてつけています。
自動車保険や火災保険、傷害保険の特約として任意につけられ、追加料金は月額150円程度です。
補償される金額は主となる保険により、1,000万円から無制限までと選択肢はさまざまです。
また、示談交渉サービスの有無もそれぞれの商品により異なります。
個人賠償責任保険はクレジットカードのオプションで付帯も可能です。
クレジットカードのオプションの場合、保険金額は1億円程度で、傷害補償とセットの商品が多くみられます。
保険料は月額190円から300円程度で、特約としてつけるより少し高めです。
多くは示談交渉サービスつきですが、ついていない商品もあるため、加入する際は確認が必要です。
加入する際の注意点
個人賠償責任保険は補償の重複が起こりやすいため、家族内で複数契約しないよう注意が必要です。
特約をつけた契約があるにもかかわらず忘れてしまい、別の保険にも同じ特約をつけてしまうケースがあります。
補償が重複しても保険金が二重に支払われるわけではありません。
保険料をムダにしないよう、家庭内の保険をよく確認してから加入しましょう。
まとめ
個人賠償責任保険は日常生活で起こるさまざまなアクシデントを幅広く補償する保険です。
次のケースも個人賠償責任保険で補償されます。
- 家族が自転車ではねた
- 子どもがケガをさせた
- ベランダからの落下物
- 店のものを壊した
- 犬が人にかみついた
- マンションの水漏れ
加入する際は、保険金額が1億円以上で、示談交渉サービスのついたプランを選ぶと万が一のときでも安心です。
個人賠償責任保険は月額150円程度で加入できるうえ、一つの契約で家族全員が補償されるお得な保険です。
個人賠償責任保険の幅広い補償内容を理解しておけば、日常生活におけるトラブルでも落ち着いた対応ができるでしょう。