テレワークの普及や新型コロナウイルスの影響で、地方移住へ関心を持つ人が増加しています。
内閣府が2023年4月19日に発表した「第6回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏在住者の35.1%が地方移住に関心があると回答しており、これまでの調査で最も高い数値となりました。
地方移住への関心理由は、自然豊かな環境に魅力を感じたためとの回答が最も多く、次いでテレワークにより地方でも同様の働き方が可能との回答やライフスタイルを仕事重視から生活重視に変えたいとの回答が多くありました。
この記事では、国や自治体が実施している移住支援制度について詳しく解説します。
地元に戻り自然に囲まれた生活をしたい方や、新しい事業を地方で始めたい方はぜひ参考にしてください。
地方創生移住支援事業とは?
地方創生移住支援事業とは、地方移住を促進するために、東京圏を含む特定地域からの移住者や起業者に支援金が提供される制度です。
東京23区に在住または通勤している人が東京圏以外に移住し、5年以上居住する意志がある方が対象です。
移住支援金は単身で最大60万円、世帯で最大100万円で、18歳未満の子どもがいる場合は一人当たり最大100万円が加算されます。
また、地域の課題解決につながる事業で起業すると、最大200万円の起業支援金が受け取れます。
たとえば、夫婦と子ども2人の世帯が移住して起業した場合、最大500万円の支援金の受け取りが可能です。
移住支援金 | 最大100万円 |
子ども2人による加算 | 最大200万円 |
起業支援金 | 最大200万円 |
合計 | 最大500万円 |
地方創生移住支援事業は、地方への移住や東京圏からUターンして起業や就業をする方に国と自治体が共同で支援金を支給します。
移住支援は2024年度までとされているため、移住を考えている方は早めに動いた方が良いでしょう。
住宅支援
移住支援金とは別に、各地方自治体はさまざまな独自の支援金制度を用意しています。
その中でも住宅支援が充実している自治体を紹介しましょう。
宮城県七ヶ宿町の地域担い手づくり支援住宅
宮城県七ヶ宿町(しちかしゅくまち)には20年住むと土地と建物が無償で譲渡される地域担い手づくり支援住宅があります。
40歳未満で中学生以下のお子様がいる世帯を対象に、新築の戸建て住宅に20年間住むと、土地と建物が無償で譲渡されます。
家族構成にあわせて住宅の間取りが決められるのも魅力的です。
秋田県にかほ市の定住奨励金
また、秋田県にかほ市では移住者に定住奨励金として最大100万円が支給されます。
定住奨励金のほかにも、宅地住宅取得支援金として固定資産税相当額を3年間キャッシュバックしたり、温泉無料パスポートを交付して市内の温泉施設の日帰り入浴料金を1年間無料にしたりとユニークな特典がついてきます。
就業・起業支援
移住前からの仕事を続ける方もいますが、移住先で新たな仕事を始めるのも移住の魅力のひとつです。
多くの自治体には起業や就業を支援する制度があり、条件を満たせば支援金を受け取れます。
自治体による新しい仕事へのチャレンジを応援する支援制度を紹介しましょう。
滋賀県草津市の創業支援補助金制度
滋賀県草津市では、多様な働き方を選択できるまちとして産業振興を促進するため、起業費用の一部を補助する草津市創業支援補助金制度を用意しています。
補助限度額は50万円ですが、UターンやIターン対象者には25万円が上乗せされるため、移住者はぜひ活用したい制度です。
宮城県石巻市の農業担い手センターによる就農伴走支援
宮城県石巻市の石巻市農業担い手センターでは、希望する就農スタイルにあわせて農業に携わるすべてを総合的に伴走支援してくれます。
農業体験をはじめ、実際に農業を始めるまでの準備や情報提供、アフターフォローまでそれぞれの希望に応じて就農コーディネーターがサポートします。
また、住む場所や暮らし方などの移住についても支援してくれるため、地方で農業を始めたいと思っている方にはおすすめの制度です。
子育て支援
子どもが生まれたことを機に移住を検討する方も多いでしょう。
子育て支援に力を入れている自治体を2つ紹介します。
茨城県境町の子育て支援制度
茨城県境町では、3人目以上を出産すると最大50万円が出産奨励金としてもらえ、一歳未満児のいる家庭には育児用品購入クーポンが3万円分支給されます。
保育料や給食費、医療費の支援も充実しており、次の3つが無料です。
- 第2子以降の0〜2歳児の保育料
- 3〜5歳児と小中学生の給食費
- 子どもや学生の20歳までの医療費
また、堺町から東京駅まで直通の高速バスを毎日運行し、通学定期券の半額を町が負担します。
最短90分で東京駅まで通えるため、子どもの進学の選択肢が広がります。
北海道足寄町の子育て支援制度
北海道足寄町では小さな子どもへの支援だけでなく、足寄高校への支援が充実しています。
足寄高校への主な支援は次のとおりです。
- 通学定期購入代金を全額支援
- 下宿代は月4万円を限度に補助
- 入学時に7万円の入学一時金を支給
- 給食を無料で提供
- 1週間のカナダ研修渡航費用を全額補助
高校以外には次のような子育て支援制度があります。
- 第1子と第2子に10万円、第3子以降には20万円の出産祝金
- 学童保育を含む保育料が完全無料
- 小中学生の給食が無料
- 未就学児の医療費は全額無料
- 小中学生の医療費は1割負担に軽減
移住して月日が経てば子どもは成長し、進学を考える時期になります。移住先は先々のことも考慮して選びましょう。
移住体験支援
移住先を決めるためには、実際に足を運んでみなければ判断は難しいでしょう。
各自治体では、それぞれユニークな移住体験を企画し、金銭面での支援制度も用意しています。
移住体験支援を企画している2つの自治体を紹介しましょう。
北海道七尾町の移住体験事業
北海道七飯町のお試し移住体験事業では、宿泊費用の一部とレンタカー利用料金全額を補助してくれます。
補助を受けるには、町内の指定宿泊施設とレンタカー事業者を利用し、SNSで七飯町お試し移住体験事業の様子の発信が条件です。
宿泊費用は1人一泊あたり15,000を上限に半額が割引されます。
新潟県上越市のオーダーメイド型移住体験ツアー
また、新潟県上越市の移住体験ツアーはオーダーメイド型で、参加者の希望にあわせて体験内容を決められます。
たとえば田植えや稲刈り、雪国体験など季節により多種多様な体験メニューがあり、参加料は無料です。
交通費や宿泊費、レンタカー代も上越市移住体験ツアー滞在費補助金を利用すると次の金額が支給されます。
補助金額 | 上限 | |
交通費 | 2分の1 | 1人1万円、1世帯2万円 |
宿泊費 | 2分の1 | 1人5千円、1世帯1万円 |
レンタカー代 | 24時間4,000円 |
新潟県外に住む移住希望者であれば誰でも参加可能で、メールかファックスで申し込みが必要です。
気になる移住先があれば、移住体験を活用し、移住後の生活をシミュレーションしてみましょう。
まとめ
地方創生移住支援事業はUターンやIターンによる移住、地方での起業を支援する制度です。
移住すると世帯で最大100万円、単身の場合は60万円、起業すると最大200万円が支援金として受け取れます。
18歳以下の子どもがいれば、一人当たり最大100万円が支援金に加算されます。
また、移住支援金だけでなく、自治体は独自の移住支援制度を用意しており、内容は住宅の提供や補助、子育てや起業・就業のサポートなど多岐にわたります。
それぞれの自治体の支援内容や条件と、自身のライフスタイルや将来ビジョンとの相性の確認が重要です。
地方移住の魅力を知り、希望にあう生活スタイルを手にいれるチャンスを掴みましょう。
国や各自治体のサポートを活用し、新しい生活にチャレンジしてみてください。
内閣府 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/index.html
2023年4月19日公表
「第6回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result6_covid.pdf
P.23 【3.地方】地方移住への関心(東京圏在住者)