物価の高騰が続き、新たな収入源を求めて副業に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省が2022年6月に発表した「副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定案について」によると、副業を認めている企業は2018年の51.2%から2021年の55.0%へと増加しましたが、禁止している企業も多く存在していることが分かります。
副業が本業の勤務先にバレたくない方や副業で手取り収入を増やしたい方に向けて、副業がバレない方法や、会社をつくり手取り収入を増やす方法を解説します。
副業で収入を増やして、生活をより豊かにしましょう。
副業で会社を作れるの?
サラリーマンが副業で会社をつくることは可能です。
2017年に政府が「働き方改革実行計画」の中で原則副業を認め、副業の普及促進を決定しました。
副業での会社設立は、法律上は問題ありません。しかし、就業規則で副業禁止の会社ではバレるとトラブルになる可能性があるため、十分注意が必要です。
副業がバレない方法
本業の勤務先に副業がバレないようにするためには、給与から天引きされる住民税を増やさないことが重要です。
副業がバレる要因の一つとして、住民税の増加が挙げられます。
住民税とは、個人の課税所得全体に対して課せられる税金です。個人の課税所得全体とは、本業の給与と副業の収入を合算した金額です。
住民税は課税所得の金額に応じて税額が決まるため、課税所得が増えると住民税が上がります。
本業の給与は大きく変化していないのに、昨年とは異なる金額の住民税の請求が自治体から本業の方へいくと、本業の経理に副業を疑われる可能性があります。
副業がバレないようにするためには、個人の課税所得を本業の収入以上に増やさないことが重要です。
副業しても個人の課税所得を増やさないために、会社を設立する方法が有効です。
副業の収入を会社の売り上げとし、役員報酬をもらわなければ個人の課税所得は増えず、住民税が上がることもありません。
なお、家族を副業で設立した会社の役員にして家族に役員報酬を払えば、世帯としての収入は確保できます。
注意点として、自身の住民税が増えない代わりに、家族には報酬分の住民税の支払いがあることを忘れないようにしましょう。
副業で会社をつくるメリット
副業で会社をつくると主に次のメリットがあります。
- 所得税より税率が低い法人税を適用できる
- 所得の分散により税額が減少する
- 経費として認められる範囲が広くなる
会社をつくるメリットを知ることは節税への理解にもつながります。税金を上手にコントロールできるようになりましょう。
法人税は所得税より税率が低め
一定の規模以上になると、法人税は所得税より税率が低くなります。
所得税の税率は、課税所得が多くなるにしたがい段階的に税率が高くなる累進課税制度により決まります。最大税率は住民税10%を合わせると約55%です。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照:国税庁 所得税の税率
一方、法人税の税率は所得が800万円以下なら15%、800万円超なら23.2%と一定です。
区分 | 適用関係(開始事業年度) | |||
令和4.4.1以後 | ||||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人 | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||
年800万円超の部分 | 23.2% | |||
上記以外の普通法人 | 23.2% |
参照:国税庁 法人税の税率
一定以上の所得が発生した場合、個人より法人の方が税率が低くなるため、会社をつくり副業収入を会社の売り上げとすれば節税できます。
所得分散により税額が減少
所得を次の3つに分散させることで収入の柱が3本になり、それぞれの税額を減らすことができます。
- 本業の給料
- 会社の収益
- 家族の役員報酬
副業の収入を個人所得にすると、所得が一つに集中するため、課税所得金額が増加して税率も上がります。
しかし、副業収入を会社の売り上げとすれば所得の分散が可能です。それぞれの課税金額が減り、会社の売り上げに対する法人税も、家族の役員報酬に対する所得税も税額を減らせます。
また、家族の役員報酬には給与所得控除が適用されるため、さらに節税が可能です。
経費として認められる範囲が広い
会社を設立すると経費として認められる範囲が広がります。
経費にできる項目は家賃や電気代などです。
社宅制度により、会社名義で借りた部屋を役員へ貸して家賃の一部を経費計上できます。また、自宅兼事務所として使う場合は、電気代の一部も経費として計上可能です。
日常で使う支出の一部が経費算入できれば、家計の支出は減り、法人としての課税所得も減るためお得です。
会社をつくるなら合同会社
副業で会社をつくる場合、設立費用や会社維持費用が安い合同会社をおすすめします。合同会社とは、出資者と経営者が同じである会社形態です。
会社といえば株式会社が有名ですが、株式会社は出資者と経営者が異なります。また、合同会社に比べて設立費用が高めです。
合同会社を設立するためには定款を作成し、法務局へ会社設立登記の申請が必要です。定款の作成に4万円、会社設立登記申請に6万円、合計10万円で会社が設立できます。
また、会社に発生した責任に対して出資した資本金の分のみ責任をとる有限責任である点も合同会社がおすすめな理由の一つです。
副業で会社をつくると手取りが増えるしくみ
副業で一定以上の収益がある方は、会社をつくることにより節税でき、手取り収入を増やせます。
手順は次のとおりです。
- 合同会社を10万円で設立する
- 会社の役員を自身と家族にする
- 副業収入は会社の売り上げにする
- 自身は役員報酬は受け取らず、家族に役員報酬を支給する
- 家賃や電気代を経費にする
副業収入を会社の売り上げとし、役員報酬を受け取らないことで、個人の課税所得を本業分のみとします。個人課税所得が本業分のみであれば、住民税が上がらず副業がバレるのを防げるからです。
一方、家族には役員報酬分の所得税と住民税が発生しますが、給与所得控除が適用できるため、所得税の税率を低く抑えられます。
また、会社の収益には法人税がかかりますが所得税より税率が低く、経費にできる範囲も広がるため、税額が減りお得です。
副業収入を個人所得ではなく、設立した会社の売り上げとし、家族が役員報酬を得ることで所得の分散が図られます。所得を分散すれば節税メリットが受けられ、手取り収入の増加につながります。
節税メリットを活用して収入を最大化し、ゆとりある生活を送りましょう。
厚生労働省 令和4年6月27日
「副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定案について」(概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000956491.pdf
首相官邸HP 働き方改革の実現
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html
働き方改革実行計画(概要)