住宅の購入を検討している方の中には「住宅ローンを契約してもこれから先、生活していけるのだろうか?」「住宅ローンの契約には、どのようなことに気をつければいい?」と不安や悩みをお持ちの方も多いでしょう。住宅ローンを長期間払い続けることに不安を感じている方に向けて、住宅ローン破綻する人の特徴を解説します。
住宅ローン破綻する人の特徴を知ることで、長期間お金を借りるうえでの返済額の決め方や返済計画の考え方を学べます。
家のために無理なローンを組むのではなく、安心して生活し続けられる家を探しましょう。
住宅ローン破綻と末路
住宅ローン破綻とはローンが払えなくなり、借りたお金を全額返済できなくなる状態を指します。
住宅を購入するときは誰もが完済まで払い終えられると確信してローン契約しますが、毎年返済不能となる人は一定数発生しています。
住宅ローン商品のひとつ「フラット35」を提供する住宅金融支援機構が2023年7月28日に公表した「統合報告書2023」によれば、2022年の返済不能率は3.05%でした。約100人に3人が住宅ローン破綻していることになります。
ローンが払えなくなる理由は収入の減少や金利の上昇、生活環境の変化などさまざまです。
住宅ローンが破綻すると、最悪の場合家を失い、財産の差し押さえにまで発展する可能性があります。
住宅ローンを6か月以上払えない状態が続くと、借りたお金の回収は金融機関から保証会社へ引き継がれ、家を競売にかける手続きが進められます。
競売で家が売れると新しい所有者に家の所有権が移るため、退去しなければいけません。
家が売れても、競売価格より住宅ローン残高が多ければ返済元金は残ります。
また、住宅ローンを滞納すると遅延損害金が発生し、返済が遅れた日数に応じてローンの残高全額に対して年14%〜14.6%も利息がかかります。
退去後は住宅ローンの残りと遅延損害金を一度に返すよう求められますが、一度に大きな金額を返せる人は少ないでしょう。
返済できなければ給料や財産が差し押さえられ、社会的な信用を失うことになります。
住宅ローン破綻の末路は厳しいですが、誰にでも起こり得ることだと肝に銘じておかなければいけません。
住宅ローン破綻する人の特徴
住宅ローン破産する人の主な特徴は次のとおりです。
- ボーナス払いする人
- ライフステージの変化を見誤る人
- 返済が老後も続く人
- 収入が減ることを予想していない人
- 家賃と比較して返済額を決める人
住宅ローンが途中で払えない状態に陥らないために、破綻する人の特徴を知り、同じことをしないように注意しましょう。
ボーナス払いする人
住宅ローンの支払いを月払いとボーナス払いに分ける人は、途中で破綻する可能性があります。とくに、ボーナス払いの金額を高く設定する人は注意が必要です。
今は定期的に高額なボーナスがもらえていても、今後も同じように続くとは限りません。
たとえば、景気が悪化や災害が原因で会社の業績が悪化し、ボーナスが大幅カットになる可能性があります。
将来、ボーナスがない外資系の年俸制の会社に転職したり、独立したりするかもしれません。
途中で返済金額の減額は難しく、毎月返済しながらボーナス分のお金も貯めるのはとても大変です。
ボーナス払いをしても、毎月の返済額は減らせますが利息の軽減効果はあまりないため、ボーナスに頼らない返済計画を立てましょう。
ライフステージの変化を見誤る人
購入時のライフスタイルを基に資金計画を立てる人は危険です。長いローン期間中のライフスタイルの変化に対応できない可能性があります。
夫婦二人で住宅ローンを借りるペアローンの場合、途中で片方が無収入になると一人で二人分の住宅ローンを返済していかなければいけません。
子育てや介護などの理由でパートナーが仕事をやめたり、時短になり収入が減ることはよくあります。また、離婚する可能性もあるのが現実です。
二人分の収入を基準に借りると、一人の収入では返済比率が高くなり、家計を圧迫して生活費にも影響します。
収入が減る場合もあれば、支出が増える場合もあります。
たとえば、子どもが私立の学校に通うことになったり、才能を伸ばすために学費や遠征費が必要になったり、子どもに想定以上の教育費がかかるかもしれません。
変化の激しい昨今、10年経てば多くの人が変化します。
住宅ローンの期間は長いため、ライフステージの変化に対応できるようにしておかないと、返済できない状況に陥る可能性があります。
返済が老後も続く人
完済年齢が定年後になる人は老後破綻する可能性が高くなります。
定年まで給料が上がり続け、想定どおりの退職金をもらえることは保証されておらず、定年後は収入が激減するからです。
終身雇用や年功序列はすでに崩れ始めています。今は長く勤め続ければ給料が上がる会社でも、何年か先には、個人の能力に応じて評価する給料制度に変化するかもしれません。
また、少子高齢化にともない、税金や社会保険料は上がり続けることが予想されているため、会社員の手取り収入は減る一方です。退職金も年々減り、会社員を取り巻く環境は厳しくなりつつあります。
たとえば40歳でマイホームを購入し、20年や30年では払えないからと支払い期間を長くして35年ローンを組むと、35年後は75歳です。
60歳で定年退職し、再雇用期間を経ても最後の約10年は年金暮らしです。
老後のことも考慮したうえで計画しないと、終の住処を追われることになりかねません。
収入が減ることを予想していない人
収入が減ることを予想していない人は、将来ローン破綻する可能性があります。
金融機関にローンの相談をすると、相談したときの収入で借り入れできる金額が提示されるため、提示された金額で借りれば問題ないと思いがちです。
しかし、今は返済できても今後も同等の収入が続くとは限りません。収入が減る可能性を考えずに返済額を決める人は危険です。
勤務先の会社の業績が悪化したり、出向や転勤により給料が下がったりする可能性もあります。
共働きの場合は、パートナーが仕事を辞めて世帯収入が減るかもしれませんし、ケガや病気、事故で働けなくなる可能性もあります。
不測の事態を想定せず、購入時の収入で提示された金額ギリギリでローンを組むと、収入が減ったときに返済が滞る危険性が高まります。
家賃と比較して返済額を決める人
家賃と住宅ローン返済額は一概に比べられないため、二つを比較して返済額を決めると、将来返済に困ることになりかねません。
マイホームを購入すると、毎月の返済以外に費用が発生します。
マンションなら修繕積立金や管理費がかかり、持ち家の場合は壁や屋根、給湯器やコンロなどの修繕費も必要です。毎年かかる固定資産税も忘れてはいけません。
また、金利が上昇すれば毎月の返済額が増える可能性もあります。
賃貸なら家賃を払えなければ安いところへ引っ越せますが、住宅ローンは全額返済しなければいけません。たとえ家を売却しても、多くの場合は債務が残ります。
家賃と同じ金額を払うなら買った方がよいと単純に考えて住宅購入を決めてローンを組むと、想定外の出費に対応できず、ローン破綻に陥るかもしれません。
まとめ
住宅ローン期間は長いと35年もあり、その間にいろいろなことが起こり得ます。
この記事で解説した次の人は、いずれも長い人生の中で起きる変化に対応できない返済プランを立てている人です。
- ボーナス払いする人
- ライフステージの変化を見誤る人
- 返済が老後も続く人
- 収入が減ることを予想していない人
- 家賃と比較して返済額を決める人
家族構成や収入、支出は常に変化します。家を購入するときの収入のみを基にした返済金額では長期間の変化に対応できません。
どのような変化にも対応できるよう、ゆとりのある返済プランをたてましょう。
住宅金融支援機構 2023年7月28日
統合報告書2023 p.113
リスク管理債権 令和4年度比率合計