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円安進行は私たちに得なの?それとも損?

為替レートは2022年に入り急激な円安・ドル高傾向になりました。近年では1ドル110円〜120円の間を推移していましたが、2022年10月20日の為替レートでは1ドル150円台となり、32年来の安値水準となりました。2023年6月では足元1ドル140円前後で推移しており、依然として円安・ドル高傾向が続いています。

 この極端な円安・ドル高傾向に至った要因は何なのか。円安が続くと日本にとってどのような得、損があるのか。今後の為替レートの見通しについても解説していきます。

円安・ドル高に至った要因とは?

 円安・ドル高に至った最大の要因はアメリカにおける利上げによるものです。アメリカではインフレを抑制する為に、2022年に入り、FRBのパウエル議長を中心としたFOMCでアメリカの政策金利を引き上げ続けました。政策金利を引き上げると企業や個人が銀行からお金を借りにくくなる効果があり、それに伴い景気の過熱感を冷ます効果があります。

 対照的に日本では当時の黒田総裁の金融緩和方針に変化は無く、アメリカと日本では金利差が開く一方となりました。国家間で金利差が開いた場合には当然、金利が低い国の通貨が売られて、金利の高い国の通貨が買われます。その結果、世界中で円売り・ドル買いが進み為替レートも円安・ドル高に至ったという背景がありました。また、2023年から就任した植田新総裁も現状、金融緩和方針からの方向転換は無い為、2023年6月では足元1ドル140円前後と依然として円安・ドル高傾向は継続しています。

円安が続くと日本にとってどのような得、損があるのか

 日本における円安のメリットは3点あります。

 1点目は日本の輸出企業の業績が上がることです。円安になれば、海外目線では日本の製品が安く買えます。すると日本で製造した自動車は電子部品などの売上が伸びて輸出産業が活性化されます。日本ではトヨタ自動車を代表とした、多くの輸出企業が日本経済の中心となっています。そのため円安は、輸出企業の多くにとって、ひいては日本経済にとってプラスと言えるでしょう。

 2点目はインバウンド需要が向上することです。円安になると外国人旅行者が増加して、日本国内の観光産業などの業績向上にも繋がります。近年では新型コロナウイルスの影響もあり外国人旅行者は減少していましたが、コロナ禍が明けたと言われている現在では、円安効果も相まって更なるインバウンド需要の向上が期待できるでしょう。

 3点目は外貨建ての資産価値が上がることです。日本でもブームになっている米国株に投資をしている人にとっては、保有時より円安になれば資産価値が上がっていきます。投資リターンにおいては為替の影響は大きく、今回の円安・ドル高の影響を受けて保有投資商品の資産価値を大きく上昇させた人も多く生まれました。

日本にとって損になること

 日本における円安のデメリットは2点あります。

 1点目は日本の物価が上がることです。円安になると輸入製品の価格が高騰する為、物価も上昇してしまいます。また、小麦やトウモロコシなどはほとんどがアメリカからの輸入であることからも、今回の円安・ドル高の影響を特に大きく受けた品目となってしまいました。円安による急激な物価は、家計の圧迫に繋がる為、私達消費者にとっては大きなデメリットとなります。

 2点目は海外旅行におけるコストが増えることです。日本人が海外旅行で旅先でのホテル代、食事代、おみやげ代などにも為替は大きく影響します。2013年の為替レートが1ドル100円前後であったタイミングと2022年の為替レートが1ドル150円前後であったタイミングで海外旅行をするのでは、同じ物を買ったり同じサービスを使うにしても約1.5倍のコストがかかります。

為替レートの今後の見通しについて

 では為替レートは今後どのような動きを見せるのかを考察していきます。私個人の見解では、2023年は引き続き円安・ドル高傾向に推移するものと見込んでいます。

 理由は2023年6月に開かれたFOMCでFRBのパウエル議長の発言から、2023年はアメリカの政策金利において年内2回の利上げが予想されているからです。まだアメリカ国内でのインフレが完全に抑制できた訳ではないというような声明も残っています。それに対して植田新総裁は、現状では金融緩和方針からの方向転換は無い為、少なくとも2023年の方向性としては円安・ドル高傾向に推移していくというのが根拠となります。

 為替レートはプロの投資家でも予測するのが困難であり、当然私達のような消費者には予測は不可能です。しかしながら円安に対する対策を練っておくことは誰にでも可能です。その対策とは「一部外貨建ての資産を保有する」ことです。保有資産が日本円だけだと、円安の影響をモロに受けてしまいます。しかし保有資産の一部をドルや外貨建ての投資信託などで保有することにより、円安の恩恵で資産価値が上がります。その結果、日本円での目減りを最小限に留めてくれます。

 為替レートの予測は不可能ですが、対策は誰でも可能です。そのことを理解して、今後も予想される円安・ドル高に備えていきましょう。


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マル得ウェブ編集部

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